麻布山善福寺 柳の井戸

東京23区

大使館や大使公邸が点在し、ぴんとした空気の中を進むと、柳の井戸はあります。歴史のある一等地に滾々と湧き出す清水は、古代から続く麻布山善福寺の歴史を感じることができます。

アクセス4.5
景観2.5
水量2.0
水質1.0
※東京都の湧水として

〒106-0046 東京都港区元麻布1丁目6

麻布十番駅から徒歩10分。訪れた日は道路規制を伴う行事を控えていたこともあり、多くの警察官が警戒に当たっていました。

麻布山善福寺は832年に弘法大師、空海が創建したといわれています。そのため、最初は真言宗であった麻布山善福寺ですが、のちにこの地に親鸞が滞在し、了海上人が親鸞の教えに帰依することで、浄土真宗となりました。戦国時代には小田原北条氏に対抗しうる勢力を有し、織田信長の石山本願寺攻めに援軍を送った記録もあるようです。その後江戸時代末期には、初代アメリカ合衆国の公使宿館としてタウンゼント・ハリスをはじめとした公使館員を迎えたそうです。

写真右の看板には次のような記述がありました。

柳の井戸は自然に地下から湧き出る清水である。

東京の市街地ではこのような泉が比較的少ないためか、古くから有名で、弘法大師が鹿島の神に祈願をこめ、手に持っていた錫杖を地面に突き立てたところ、たちまち噴出したものだとか、ある聖人が用いて掘ったものであるとか、信仰的な伝説が語り継がれてきた。

特に現在の我々としては、大正12年の関東大震災や昭和20年の空襲による大火災の際に、この良質な水がどれほど一般区民の困苦を救ったかを心にとどめ、保存と利用に一層の関心をはらうべきものと思われる。

昭和49年 港区教育委員会

余談ですが、私が訪れた時期はお彼岸で、多くの方が麻布善福寺を訪れていました。そんななか、おじいちゃんと思われる方が、10代の孫に、「関東大震災の時は皆ここの井戸水を飲んだんだよ」とおっしゃっていました。まさに上の看板に記載のことですね。古くから地域に欠かせないものであったのだと伺えます。

水には藻が生えており、飲用に適する状態ではありませんでした。

5万分の1地質図幅 東京西南部

矢印で示した部分が柳の井戸です。渋谷川が削った斜面にあることがわかります。帯水層はTmで示されている鶴見層(泥、砂、礫および火山灰)と推察されます。

マンションの建設が相次ぐ中、水量も次第に減ってきているようです。この歴史ある名水をいつまでも受け継いでいきたいですね。

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